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第一回レポート/瞽女唄の音楽性と伝承について

2010年5月8日

瞽女唄の音楽性と伝承について

盲目の女旅芸人の集団、瞽女さんを音楽・伝統芸能・福祉などの様々な角度から見直していく、「もんてん瞽女プロジェクト」の初回レポートをお送りします。

第一回のテーマは瞽女×音楽。
三味線と声の芸能であり、盲目ゆえに自身の記録をもたず口承と伝承によって伝えられてきた瞽女さんの音楽に注目しました。

映画「瞽女さんの唄が聞こえる」の上映後、アメリカ出身の元ピアニストで、現在は山梨大学で民族音楽学を研究するジェラルド・グローマー氏によるレクチャーの後、座談会が行われました。

■レクチャーでは
越後を中心とした瞽女唄の分類とその音楽の特徴を説明していただきます。

瞽女唄の音楽性と伝承について

瞽女は鎌倉・室町時代ほどから見られる盲目の女性の芸人をさします。
盲目の男性たちが当道座という組織を作り、琵琶を使って語り物をしていたのに対して、瞽女の使用した楽器は三味線でした。ただし、三味線が渡来するのは江戸時代。それ以前の瞽女が使用していた楽器は多くが残された絵画などから推察するに打楽器であったと考えられています。(”目”の上に”鼓”を書くと、「瞽女」の”瞽”の字になります。)
また、盲目の女性が絵で描かれる場合はなぜか琴を弾く場面が多いそうです。

地理的分布でいうと、瞽女は関西や四国、九州などでも見られた記録はありますが、現在録音として残っている記録の大半が越後の長岡と高田のものです。(ただし、旅芸人であった瞽女が長野や栃木などに演奏をしていた、という記録も残っています。)

高田瞽女の唄は

【祭文松坂(さいもんまつざか)】
1段20分〜30分で語りの段物。代表的な唄として「山椒大夫」「葛の葉」「俊徳丸」「小栗判官」など。

【口説(くどき)】
19世紀から活発に歌われたもので心中や滑稽ものといったパロディ的な要素を持つ。「鈴木主水(すずきもんど)」「八百屋お七口説」など。

【門付け唄(かどづけうた)】
1分〜2分の短い曲。地方性がある。「かわいがらんせ」「こうといな」「庄内節」など

【民謡・雑歌】
地方性がさらに強い。「新保広大寺」「糸魚川小唄」「直江津小唄」など

【その他】
万歳「三河万歳」、「話し松坂」、「春駒」、「地蔵和讃」など

に大きく分類できます。

村に着いた瞽女さんは、短い門付け唄を歌いながら軒先を周り、その到着と夜のコンサートの存在を知らせます。ここでの役割は宣伝。本番は瞽女宿でのコンサートですので、三味線をメインにした演奏でその存在を知らせます。
そして夜、その村の豪農などが提供する瞽女宿で、語り祭文松坂をメインとする唄と三味線を使った公演を行う訳です。

グローマー氏からこのような説明を受けた後、録音物として残っている高田瞽女と長岡瞽女の音楽を聞き比べました。

聞いたのは、長岡瞽女による門付唄「岩室(甚句)」と口説「鈴木主水」と、高田瞽女による門付唄「かわいがらんせ」と祭文松坂「山椒大夫」。

三味線の同じ旋律の繰り返しによる旋律に言葉をのせた音は普段聞き慣れない音楽ですが、配布されたプリントから歌詞を追っていくことで文意をつかむことができました。
ちょっと遠くの音楽、むしろ音楽にのせた物語の一部といったところでしょうか。

これらの音楽を文字をもたない瞽女さんたちはすべて暗記していたわけです。

■座談会
当初は車座での話し合いを想定していましたが、想定していたよりも多くのご来場をいただいた嬉しい誤算もあり、客席からの質問や感想をいただきながら話しをすすめさせていただくことに。
お話に加わっていいただいたのは、グローマーさん、伊東監督と第6回のゲストで瞽女文化を発信する会代表の市川信夫さん。そしてごぜプロジェクト事務局の斎藤が司会をつとめました。
会場では、高田瞽女のゆかりの場所を記した瞽女マップの配布や高田名物、瞽女最中が販売され、リラックスした雰囲気の中、話題はすすみます。

ジェラルド・グローマー氏

まず、外国人であるグローマーさんが瞽女唄に興味を持ったきっかけから。

グローマーさんが尺八などの日本楽器の持つ音の響きに現代音楽に似た印象をいだいたことが日本音楽に触れたきっかけだったそうです。
そして、当初に興味をいだいた津軽三味線の演目が瞽女唄と共通していたことから瞽女を知ります。「瞽女」という文字も知らないまま、慣れない日本語で初めて聞いた「瞽女唄」はその言葉はよくわからなかったそうですが、長岡系瞽女で当時存命だった小林ハルさんに会い、実際の唄を聞いたときに80歳をゆうに過ぎた小さなおばあさんから出てきた声の音量とその音楽のパワーに圧倒されたと同時に、長い歌詞がすらすらと出てきたことに驚いたそうです。

瞽女唄の音楽性と伝承について

市川信夫氏

しかし、この音楽が現代において、日本人にとっても耳慣れないことは事実です。実際、グローマーさんが教えている山梨大学で学生に聞かせてもなかなかその音楽になじむことができないことが多いそう。
それは、現在のポップス音楽の大半が3分程度で短くビートがはっきりしているため、ビートが曖昧、つまり踊れない音楽である瞽女唄のような同じ旋律で長い音楽を聞くことに慣れていないのではないか、とのこと。
それに対して、瞽女唄というものはたんたんと語ることが特徴であり、そのたんたんと物語を語る中でも心にしみてくるもの、だと言う市川さん。またCDや録音ではなく、ライブで瞽女唄に触れることで理解は深まるのではないかという意見もありました。

伊東監督

それから、話しは瞽女唄の地域性について。
高田を中心として群馬/信州に至る地域で150以上の瞽女宿という公演場所を持っていた高田瞽女と、瞽女宿のシステムがなく、町中で歌うため、大きな声で歌うことが求められていた長岡瞽女は、歌い方に違いがあることが市川さんより説明がありました。

このほか話題は韓国の語り物のパンソリやシャーマンであるムーダンといった東アジアの音楽の類似や巫女やイタコとの関連、農村を訪れる化粧をして着物をきれいに着て唄を歌う存在の特殊性や「へそ穴口説き」にある歌詞の下ネタ的要素、芸人という職人としての瞽女、口承による物語の伝授など多岐にわたりました。
グローマーさんによる瞽女音楽における旋律と言葉の話しが最後に。曰く「唄の文句は忘れても、三味線の音は忘れない」。

言葉と音、ものがたり、日本の音、伝えていくこと…。
瞽女さんの三味線の声の中から読み取れる様々なことを考えさせられる会でした。

瞽女唄の音楽性と伝承について

齋藤弘美(もんてんごぜプロジェクト)

瞽女の音楽に興味をもたれた方はグローマーさんの『瞽女と瞽女唄の研究』(名古屋大学出版会)という大著があります。また、現在瞽女唄を歌い継ぎ、広める活動をしている月岡祐紀子さんや竹下玲子さんといった方々もいらっしゃいます。

次回は、6/13(日)に芸人一家で育ち、ご自身も俳優として活躍されている中西和久氏をお迎えして「伝統の伝承」ということいついて話し合いたいと考えています。今回とはまた違った視点で瞽女さんを見つめてみます。

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